インタビュー:特定非営利活動法人 パレスチナ子どものキャンペーン

今回は、2016横浜国際フォーラム(2016年2月6日~7日@横浜)にて特定非営利活動法人 パレスチナ子どものキャンペーンの中村様にインタビューを行いました。

団体様公式サイト:http://ccp-ngo.jp/

本日はありがとうございます。まず活動内容から教えていただけますでしょうか?

(シリア難民支援、乳幼児の育児用品配布)

(シリア難民支援、乳幼児の育児用品配布)

中村と申します。パレスチナ子どものキャンペーンという団体名が示しますように、中東のパレスチナにおける子ども達の支援を行っています。ただ、パレスチナだけでなく、難民が逃れている隣国のレバノンでの支援や、最近ではシリアから避難されている難民の人たちや、2014年の戦争で甚大な被害を受けたガザの緊急人道支援も行っています。

緊急的な活動として、必要な物資を配ったり、保健医療支援、例えば歯科や臨床心理士の方による心理サポートや、教育プログラムとして学校の勉強についていけないような子どもたちに補習を行うといった活動をしています。

団体名から察するにパレスチナから活動が始まっているというイメージですが・・・

(レバノン国内のパレスチナ難民キャンプ。一時的なものとして建設された建物に増築が重なり、電線と配水管が重なり合う)

(レバノン国内のパレスチナ難民キャンプ。一時的なものとして造られた建物に増築が重なり、電線と配水管が絡み合う)

実はレバノンから始まっています。パレスチナ難民の方がレバノンに約40万人ほど逃れており、難民として帰れないまま何十年もその地で暮らしています。また、それだけでなく非常に厳しい生活を強いられている。例えば仕事にも就けず、二級市民として扱われています。そういった人たちの支援が出発点となっています。また、難民となった後にも度重なる戦火に見舞われている場所もあり、人道的な支援が必要な状態が続いている。

本来は状況が落ち着いて、良い方向へ向かってほしいのですが、中東情勢が悪化し続ける一方のため、どんどん悪くなっています。何十年前に比べてもはるかに危機的な状況になっているため、活動を続けていかなければいけない状況です。

問題が起き続ける限り、活動は永遠に続くように思われるのですが、問題解決の着地点として、こうあってほしいといったアイデアなどはあるのでしょうか?

何が大事か、という問いに当たるかと思うのですが、現地の人の自主性を大事にして、しっかりとニーズに則った自立に繋がっていく支援が必要だと思います。決して支援を受けるというだけでなく、自分達の生活や子どもたちのために活動をしたいと考えているパレスチナの人たちがいますので、そういった人たちと協力して、現地の人に寄り添って活動していく必要があると思います。

先ほど言われていた「二級市民」というのはその国のシステムなのでしょうか?

第三国にいる人々で、その国の人ではなく、かつ帰国もできないため、仕事、勉強の機会が奪われ、長期に渡って居住しているにも関わらず選挙権もなく財産も持てない、そういった人たちは二級市民と呼ばれます。難民でなければ描けていたはずの人生を奪われ、第三国で状況を切り開けない状態でいる、という人たちだと考えます。

そうでしたか、ありがとうございます。そういった状況の人たちがいる以上、この活動は必要とされそうですが、活動自体はどのように始まったのでしょうか?

団体の活動は古く30年前に立ち上がりました。80年代のレバノンで内戦がおこり、パレスチナ難民キャンプで難民の人々が生命の危機や生活が脅かされる中、遠くの情勢ながら日本から何かアクションが必要では、ということで始まった活動です。その後も、現地の危機的な状況は収まらず、支援を必要とするニーズはますます広がったため、それに応じて活動を広げてきたという経緯があります。レバノンの難民キャンプだけでなくパレスチナ自治区など場所を広げつつ、活動も多様化していかないといけない状況になっています。

中村さんご自身が現在の活動をされることになった経緯はどうだったのでしょうか?

私自身は、NGOにもともと興味があり、大学生の時にボランティア活動をしてみたいと思ったことがきっかけです。中でも子どもの心理サポートに非常に興味があり、そういった活動を行っていた団体を探していましたが、この団体がパレスチナ自治区で軍事侵攻のあった地域の子どもたちに心理サポートをしているということで興味を持ち、ボランティアとして参加しました。その後、現地に入る機会もあり、現場を自身の目で見てみたのですが、現場が一筋縄では理解できなくて難しいのですよね・・・問題が一体何なのか、いう本質が見えてこなくて・・・。よく、「自分の目で見ないと分からない」、と言われることも多いかと思いますが、私は自分の目で見たものの、ますますわからないな、と感じました。そのため、もう少し腰を据えて勉強していかないといけないと思い、この活動を続けていく中で、いつの間にかスタッフになっていました。

活動で海外現地へ行かれることが多いのでしょうか?

現在は年に2回くらいですね。1回に2~3週間という期間で現地に行っています。それまでは駐在員をしており、2011年から2014年まで約3年パレスチナにいました。

パレスチナにおられて危険を感じたことは?

ジャーナリストではないので、自分たちの身の安全を確保しながら事業を実施していくという形にはなりますが、それでも現地の情勢は動くため、巻き込まれないように細心の注意を払っていました。身の危険を感じたことはありませんでしたが、緊急事態は経験しましたね。イスラエルが空爆を始めそうだという情報があればガザから撤退しないといけない、といった状況です。銃を突き付けられたことや、ミサイルが自分達の方向へ飛んで来たというようなことはありませんでしたね。

去年は特にイスラム国やシリア内戦の問題で難民というワードが取り上げられることが多かったですし、パレスチナの問題はずっと続いていますね。ただ、日本にいると遠くの出来事に感じてしまいます。難民やパレスチナ、中東情勢について日本にいる私たちはどういう視点で見て、どういった行動をとっていけばいいと考えられているのでしょうか。

もっと身近に感じるためにはどうしたら良いかということでしょうか。現在、欧米社会を含めてテロの標的になったり、ジャーナリストの殺害事件も起こりました。そういった事件を通して、より近くに感じることにもなってしまいましたが、別の切り口から身近に感じられる機会を提供することも大切だと思います。同じ人間であって、パレスチナもシリアの人々も同じように平和に生きたいと思っている人達です。私達の感覚としても理解できる側面は共通項になると思います。例えば、電気がない中で、洋服がない中で、どんな思いで彼らがいるか想像してみるというのはその一例になると思います。特に東日本大震災を経験した日本は、危機的な状況にある人達がどんな思いでいるのか、何が必要なのかという事を身近に感じられる経験をしてきていると思いますし、その中で自分たちが何をしなければいけないのか、という点ももう少し身近に引き寄せられるような気がします。

とはいっても中東はすごく遠いなと思いますよね。文字も言葉も違いますし。ただ、例えばサッカーの試合。アジアリーグ予選がありましたが、パレスチナや中東の国々と同じリーグですよね。日本代表もパレスチナやイラクと対戦したこともありました。向こうの人たちもサッカー大好きで情熱を燃やしているので文化やスポーツは共通項として入りやすいですよね、そういったところから人間性も見えるじゃないですか。パレスチナのサッカー代表が占領のためにガザから出られず、出場できなかった、ということもあったりする。それは日本代表だと考えられないことですよね。スポーツなのに参加できない人がいるんだろうか、など、そういった切り口があったら紹介していきたいと思いますね。

中村さん個人として今後の課題や抱負などはありますでしょうか?

もっと勉強を深めていきたいという思いがあります。国際協力を学べる場は増えてきており、大学や研修も整備され、チャンスは増えてきていると思うので、現場で役立つ知識技能を磨ける機会はあると思いますね。どのようにプロジェクトを運営していくのか、どうすれば自分たちが関わっている現地の人たちの声をうまく拾えるようになるか、どうすれば日本の人に活動をうまく伝えるようになるか、また現地のことをよく理解いただいて寄付が集まる方法はないかなどです。NGO団体の中では共通の課題がたくさんあると思うのですが、そういったことを考えてブラッシュアップする機会を一生懸命作っている人たちもおられると思うので自分も勉強していかないとな、と思います。

最後にボランティアをキャリアや職業として考えられている人にメッセージがあればお願いします。
先ほど研修でいろいろ学びたい、と申し上げた点とすこし逆行するかもしれませんが、小手先の技術的なことだけでなく現場や事業に対する興味や深い関心を自分の中で育てていくことが非常に大事ではないかと思います。国際協力したいと漠然と思っている人が多いと思いますが、その中で何が一番興味があるのかな、難民かな、教育かな、農村開発かな、という自分の興味関心を深堀り出来るようになると面白いのではないかと思います。自分自身が現地の駐在員の時は農業事業に携わった時があって、とても農業って面白いなと思ったんです。子どものキャンペーンなのですが子どもが安全に育つために食料が十分あることが必要不可欠と思うが、農業という視点は子どもだけでなく色々な人が参加、楽しんで前を向けるような感覚があり日本の農業関係の人も面白がって参加されたりするのですよね。そういうものがあると楽しくなるので、やっていて楽しくなることが見つかるとよいなと思います。

本日はありがとうございました。

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